「今度の土日、どこか行こうか?」
そんな会話から始まる旅行計画に、少し疲れを感じていませんか? 高騰する宿泊費、どこへ行っても人また人、帰りの渋滞でぐったり……。長年、カレンダー通りの勤務を全うされてきた貴方なら、その「週末旅行の疲弊」を誰よりもご存知でしょう。
しかし、もう私たちは「土日」に縛られる必要はありません。一歩踏み出して、平日に旅の予定を入れてみてください。そこには、現役世代が歯噛みして羨ましがる「優越感」に満ちた世界が広がっています。
宿泊費は土日の半額近くまで下がり、大浴場は貸切状態。料理はアップグレードされ、スタッフのサービスも手厚くなる。これこそが、長年の勤労の果てに手に入れた、大人だけの特権です。
本記事では、元公務員としての視点から、徹底的なリサーチに基づいた「賢い平日プランの選び方」と、浮いた予算で楽しむ「極上の過ごし方」をご提案します。ただ安いだけではない、知恵と工夫で満足度を最大化する、新しい夫婦旅のスタイルを一緒に見つけに行きましょう。
圧倒的な「平日優越感」。なぜ今、夫婦旅なのか
長年、組織の一員としてカレンダー通りの勤務を続けてきた私たちにとって、平日に旅行へ出かけることには、ある種の「背徳感」と、それを上回る強烈な「優越感」があります。現役時代、土日の混雑した観光地で人波に揉まれ、高い宿泊費を支払っていたのが嘘のように思える瞬間です。
定年や再雇用といった人生の節目を意識し始める50代・60代だからこそ、夫婦水入らずで過ごす時間の質にはこだわりたいものです。平日旅行は単に「安い」だけではありません。そこには、時間と空間を贅沢に使い、心からの安らぎを得るための条件が揃っています。

土日価格の半額も?驚くべきコストパフォーマンス
まず、もっとも分かりやすいメリットである費用面について、具体的な視点でお話しします。温泉旅館やホテルの宿泊料金は、需要と供給のバランスによって変動する「ダイナミックプライシング」が一般的です。
土曜日や祝前日の宿泊料金は、平日の1.5倍から2倍近くに跳ね上がることが珍しくありません。例えば、人気の温泉地にあるハイクラスな旅館で、土曜日泊なら一人当たり3万円するプランが、平日であれば1万5千円から2万円程度で提供されていることは多々あります。夫婦二人であれば、合計で2万円以上の差額が生まれる計算です。
この差額は決して小さなものではありません。この浮いた予算をどのように活用するかによって、旅の質は劇的に変わります。単なる節約旅行ではなく、同じ予算でより高い満足度を得る「賢い選択」こそが、平日旅行の醍醐味といえるでしょう。
混雑とは無縁。「大浴場を独り占め」という最高の贅沢
金銭的なメリット以上に、精神的な満足度を大きく左右するのが「混雑具合」です。土日の温泉地では、チェックインの手続きに行列ができ、大浴場へ行けば芋洗い状態、食事処でも隣の席との距離が近く落ち着かない、といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
平日の温泉宿は、時間がゆっくりと流れています。広々とした大浴場の露天風呂を、たった一人で独占できる瞬間が訪れることも珍しくありません。誰にも気兼ねすることなく、手足を伸ばして湯に浸かり、鳥のさえずりや川のせせらぎに耳を傾ける。これぞまさに、温泉旅行に求めている「非日常」ではないでしょうか。
また、スタッフのサービスにも余裕が生まれます。チェックイン時の丁寧な案内、食事の際の一言二言の会話など、マニュアル通りではない温かみのあるおもてなしを受けられるのも、平日の空いている時期ならではの特権です。
道路も公共交通機関もストレスフリー
移動の快適さも無視できません。週末の高速道路は渋滞がつきものですが、平日であればスムーズに流れています。目的地までの所要時間が読めるため、焦ることなく安全運転でドライブを楽しむことができます。
電車やバスを利用する場合も同様です。特急列車の指定席も取りやすく、車内も静かです。観光地についた後の移動手段である路線バスやタクシーも、待ち時間なく利用できることがほとんどです。移動による疲労が最小限に抑えられるため、宿に到着してからの体力も十分に温存できます。体力的な衰えを少しずつ感じ始める年代にとって、この「移動の楽さ」は、旅を楽しむための重要なファクターとなります。
元公務員が教える!賢い「格安プラン」の探し方
公務員時代、予算管理や契約業務で培った「数字へのこだわり」と「リサーチ力」は、旅行の計画にも活かされます。漫然と予約サイトを眺めるのではなく、明確な戦略を持ってプランを探すことで、掘り出し物に出会える確率がグッと高まります。ここでは、私が実践している具体的な検索・予約のテクニックをご紹介します。
予約サイトと公式サイトの「二刀流」比較術
旅行予約サイト(OTA)は、複数の宿を横断的に検索できるため非常に便利です。ポイント還元や独自のクーポン配布を行っていることもあり、一見するともっとも安く見えます。しかし、即決は禁物です。必ず「宿の公式サイト」も確認する癖をつけましょう。
近年、宿泊施設側は、高い手数料を支払わなければならない予約サイト経由よりも、公式サイトからの直接予約を優遇する傾向にあります。「ベストレート保証」として最低価格を提示していたり、公式サイト限定の特典(ワンドリンクサービスや貸切風呂無料など)を用意していたりすることがあります。
予約サイトで目星をつけたら、必ずその宿の公式サイトを開き、同じ条件のプランがないか確認してください。手間はかかりますが、このひと手間が数千円の差を生むこともあります。また、電話での問い合わせも有効です。ネットには出ていない「シニア割」や「連泊プラン」を案内してくれるケースも、老舗旅館などでは今でも存在します。
狙い目は「火・水・木」。エアポケット日程を攻める
平日と一口に言っても、曜日によって価格や混雑度は微妙に異なります。月曜日は日曜泊からの連泊客や、有給休暇を一日つけて土日月で休む層がいるため、意外と人がいます。金曜日は言わずもがな、週末の前乗りで混み始めます。
もっとも狙い目なのは、週の真ん中である「火曜日・水曜日・木曜日」です。ここはまさに、観光地のエアポケット。宿泊料金が底値になることが多く、予約も取りやすい特異点です。
現役時代は、週の半ばに休みを取ることなど想像もできなかったかもしれません。しかし、今は違います。あえて週のど真ん中に旅行を組み込むことで、街全体が静まり返ったような静寂を味わうことができます。また、多くの美術館や観光施設は月曜日を休館日としていることが多いため、火曜日以降であれば観光施設も確実にオープンしています。
「直前割」と「早割」の使い分け
予約のタイミングには二つのセオリーがあります。一つは、数ヶ月前から計画を立てて予約する「早割(早期割引)」。もう一つは、宿泊日の数日前に空室を埋めるために出る「直前割」です。
私たち世代におすすめしたいのは、基本は「早割」で良い宿を押さえつつ、日程が自由になるなら「直前割」をパトロールすることです。特に高級旅館の場合、キャンセルが出た際などに、驚くような価格で直前プランが出ることがあります。
「明日、天気が良さそうだから温泉に行こうか」
そんな会話から急遽出発できるフットワークの軽さがあれば、直前割は最強の味方になります。逆に、結婚記念日や誕生日など、絶対に外せない日程の場合は、迷わず早割を利用して、眺めの良い部屋を確保するのが鉄則です。リスク管理とコスト意識のバランス、これもまた、長く実務をこなしてきた皆様ならお得意の分野ではないでしょうか。
浮いた予算で何をする?大人の贅沢な過ごし方
平日利用や割引プランで宿泊費を抑えることができたら、そこで満足してはいけません。浮いた予算を「貯金」に回すのではなく、「体験の質」を上げるために再投資します。これこそが、年金や貯蓄を切り崩すだけの老後生活に陥らないための、心の豊かさを守る投資です。
料理を「特選会席」へアップグレード
スタンダードなプランの食事も十分美味しいものですが、数千円の追加料金でメイン料理をグレードアップできるなら、迷わず選択肢に入れましょう。地元のブランド牛、旬のアワビや伊勢海老、松茸など、その土地、その季節でしか味わえない味覚を楽しむこと。これこそ旅の醍醐味です。
若い頃は「量」を求めていたかもしれませんが、今は「質」を求める年代です。美味しいものを少しずつ味わい、地酒と共に楽しむ夕食の時間は、夫婦の会話を豊かにします。「あの時のステーキは美味しかったね」という記憶は、モノとして残るお土産以上に、長く心に残る資産となります。
露天風呂付き客室で過ごす、おこもり時間
平日プランで安くなった分を原資に、思い切って「露天風呂付き客室」を選んでみるのも素晴らしい選択です。大浴場へ行く移動の手間もなく、24時間好きな時に、好きなだけ湯浴みを楽しむことができます。
特に、足腰に少し不安を感じている場合や、パートナーが手術痕などを気にして大浴場を避けているような場合、客室露天風呂は最高のソリューションとなります。窓を開け放ち、冷たい夜風を感じながら温かい湯に浸かり、そのままベッドに潜り込む。そんな「何もしない贅沢」を享受できるのは、プライベートな空間が確保されているからこそです。
翌日は「レイトチェックアウト」で朝寝坊
平日特典としてよく見かけるのが「レイトチェックアウト」です。通常のチェックアウトが10時のところ、11時や12時まで滞在できるプランです。
この1時間、2時間の差は劇的です。朝食後にバタバタと荷造りをする必要がありません。もう一度お風呂に入ったり、ロビーでコーヒーを飲んだり、あるいは二度寝をしたり。朝の時間を優雅に過ごすことで、旅の疲れの残り方が全く違います。
現役時代、毎朝決まった時間に起き、出勤していた私たちにとって、平日の朝に宿でゆっくり過ごすこと以上の贅沢があるでしょうか。チェックアウトギリギリまで滞在し、昼食を食べてからゆっくり帰路につく。そんなゆとりあるスケジュールを組めるのも、平日旅行ならではの特権です。
夫婦の会話が弾む、おすすめの温泉地選び
行き先選びも重要です。若者が集まる映えスポットよりも、落ち着きがあり、歴史や情緒を感じられる温泉地が、私たち世代には適しています。
アクセス重視か、秘湯重視か
まず決めるべきは「移動」と「滞在」のどちらに重きを置くかです。
移動の負担を減らしたいなら、新幹線や特急一本で行ける温泉地がおすすめです。例えば関東近郊なら、箱根、熱海、鬼怒川などは、駅からのアクセスも良く、駅周辺の商店街も賑わっているため、車がなくても十分に楽しめます。
一方で、あえて不便な場所にある「秘湯」を目指すのも一興です。バスの本数が少ない、あるいは山道を運転しなければならない場所にある宿は、それだけで客層が絞られ、静寂が保たれています。群馬の法師温泉や秋田の乳頭温泉郷など、古き良き日本の原風景が残る場所は、ただそこにいるだけで心が洗われます。夫婦で地図を広げ、どのルートで行くか相談する時間も、旅の一部です。
静寂を楽しむ「離れ」のある宿
宿の構造にも注目しましょう。大きなホテル形式の宿も便利ですが、敷地内に客室が点在する「離れ」形式の宿は、別荘に来たような感覚で過ごせます。隣の部屋の物音や廊下を歩く人の気配を感じることなく、二人だけの世界に浸ることができます。
特に、木造建築の古い宿は、廊下の軋む音や木の香りが、昭和の時代を生きてきた私たちの琴線に触れます。最新の設備はなくとも、手入れの行き届いた庭園を眺めながら、縁側で夕涼みをする。そんな時間の過ごし方ができる宿を探してみてください。
定年後を見据えた「新しい旅のスタイル」
今回の平日旅行は、単なるレジャーではありません。定年退職後に訪れる「毎日が自由時間」という生活の予行演習でもあります。
計画そのものを楽しむ
現役時代、仕事のプロジェクトを計画し、実行し、成果を出すことに喜びを感じていた方も多いでしょう。そのエネルギーを、今度は「遊びの計画」に向けてみてください。
どの日程なら安いか、どのルートなら効率が良いか、どの店が評判が良いか。徹底的にリサーチし、緻密な行程表(アイテナリー)を作る。公務員時代に培った事務処理能力や計画性は、最強の武器になります。
そして、現地に行ったら、その計画にあえて縛られない柔軟さも持つこと。「雨が降ったから美術館に変更しよう」「疲れたから早めに宿に入ろう」。そんな臨機応変な判断ができるのも、時間に追われていない平日だからこそです。
夫婦で楽しむ平日の温泉旅行。それは、長年勤め上げた自分たちへのご褒美であり、これから始まる第二の人生を、賢く、豊かに生き抜くための「作戦会議」の場でもあるのです。ぜひ、次の平日はカレンダーに丸をつけて、二人だけの特別な旅に出かけてみてください。


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