人生100年時代、折り返し地点を過ぎた60代の私たちにとって、これからの時間は「余生」ではなく、自分らしく生きるための「本番」です。組織の論理や家族の責任を果たし続け、ふと立ち止まった時、「風を切って走りたい」「自分の意思でハンドルを握りたい」という衝動に駆られることはありませんか?かつて夢中になったバイクにもう一度乗りたい、あるいは新しい趣味としてバイクを始めたい。その情熱は、私たちのセカンドライフを輝かせる素晴らしいエネルギーです。
しかし、20代の頃と同じ感覚でバイクを選んでしまうと、思わぬ落とし穴にはまることになります。衰え始めた体力、老後を見据えた資金管理、そして何より「転倒や事故」というリスク。これらを無視しては、長く楽しむことはできません。当サイトのテーマである「稼いで遊ぶ」を実践するためには、賢い選択が必要です。今回は、元公務員であり、現在は組織に縛られない生き方を実践している私の視点から、60代からのバイク選びについて、体力面と維持費の両面から徹底的に解説します。無理のない相棒を見つけ、生涯現役ライダーを目指しましょう。
なぜ今、60代でバイクなのか?セカンドライフを彩る「自由」の翼
定年退職後の生活、あるいは早期退職して個人事業主としての道を歩み始めた時、私たちが手にする最大の資産は「自由」です。しかし、自由は時に孤独や虚無感を連れてきます。そんな時、バイクという乗り物は、単なる移動手段以上の意味を持ちます。

組織やしがらみからの解放感を味わう最高のツール
公務員時代、私たちは常に組織の規律、前例踏襲、そして人間関係という目に見えない鎖に繋がれていました。私も長年、その鎖の中で安定と引き換えに自由を預けてきました。しかし、バイクに跨り、ヘルメットの中で一人になると、そこは完全に自分だけの世界です。
行き先を決めるのも自分、ペース配分を決めるのも自分、途中で引き返す決断をするのも自分です。誰の許可も決裁もいりません。エンジンの鼓動を感じながら流れる景色を見ていると、組織でのストレスや将来への漠然とした不安が、風と共に後ろへ飛び去っていく感覚を覚えます。この「圧倒的な自己決定感」こそが、長年組織に尽くしてきた60代の心に最も効く特効薬なのです。
孤独を楽しむ力と、新しい仲間との出会い
「組織を出た生き方」でも触れましたが、60代以降は孤独との付き合い方が重要になります。バイクは基本的に一人で楽しむものですが、不思議なことに、バイクに乗っていると社会との緩やかな繋がりが生まれます。
道の駅で休憩している時に同世代のライダーと交わす挨拶、SNSを通じた情報交換、あるいはキャンプ場での一期一会。役職や肩書きのない、一人の人間としてのフラットな交流がそこにはあります。無理に群れる必要はありませんが、好きなものを共有できる仲間がいるという事実は、セカンドライフの精神的な安定剤となります。「一人でも楽しめるし、誰かと共有もできる」。この絶妙な距離感が、大人の趣味として最適なのです。
認めざるを得ない「現実」と向き合う~体力・反射神経の変化~
夢やロマンを語る前に、元実務担当としてリスク管理の話をしなければなりません。60代のバイク選びで最も重要なのは、「自分の老化を直視すること」です。気持ちは20代のままでも、体は確実に変化しています。これを認めない選択は、事故や早期のリタイア(バイクを降りること)に直結します。
「取り回し」の恐怖!立ちゴケは体力よりコツと車重
若い頃に大型バイクを乗り回していた方ほど、「自分は大丈夫だ」と過信しがちです。しかし、60代になると筋力だけでなく、平衡感覚や柔軟性が低下します。最も注意すべきは、走行中ではなく、エンジンを切った状態での「取り回し」です。
駐車場での出し入れ、砂利道でのUターン、渋滞時のふらつき。250kgを超えるような大型バイクを支えきれず、立ちゴケをしてしまうケースは後を絶ちません。一度倒れたバイクを起こす際、腰を痛めてしまい、そのまま乗るのが億劫になって売却してしまったという話もよく聞きます。
私たちに必要なのは、見栄を張って巨大な鉄馬を操ることではなく、自分の体格と体力に見合ったサイズを選ぶ勇気です。「またがって両足がつくか」「少し傾けても自分の力で支えられるか」。この物理的な限界を見極めることが、長く乗り続けるための第一歩です。
動体視力と疲労回復力の低下を計算に入れる
もう一つの現実的な問題は、目と疲れです。動体視力の低下は、標識の見落としや、飛び出しへの反応遅れに繋がります。また、若い頃なら一晩寝れば回復した疲労が、60代では翌日、翌々日まで残るようになります。
スーパースポーツのような前傾姿勢のきついバイクは、首や腰への負担が大きく、長時間のライディングが苦行になりかねません。視野が広く確保でき、自然な姿勢で乗れるバイクを選ぶことは、安全運転のためにも不可欠です。かっこよさだけで選んで体を壊しては、せっかく築いた「稼いで遊ぶ」ライフスタイルが台無しになってしまいます。
元会計担当が教える!「維持費」から見る賢いクラス選び
次に、元会計実務担当としての視点から「コスト」について切り込みます。私たちは年金に頼らない生き方を目指していますが、だからといって無駄な固定費を垂れ流して良いわけではありません。バイクは購入費だけでなく、維持費がかかる資産です。ここをどうコントロールするかが、豊かな生活の鍵を握ります。
車検の有無は大きい!250ccクラスの圧倒的コスパ
バイクの維持費において最大の分岐点となるのが、排気量250ccの壁です。250ccを超えるバイク(400cc以上や大型バイク)には、2年に1度の「車検」が義務付けられています。
ユーザー車検で安く済ませる方法もありますが、整備知識のない一般ライダーであればショップに依頼することになり、法定費用と整備費で数万円から10万円近くの出費が発生します。さらに、重量税もかかります。
一方、250cc以下のクラスには車検がありません。もちろん、安全のために定期点検は必要ですが、強制的にまとまったお金が出ていくイベントがないのは、キャッシュフローの観点から非常に有利です。最近の250ccクラスは性能も向上しており、高速道路を使ったツーリングも十分にこなせます。「見栄を捨てて実利を取る」。これは賢い大人の選択です。
任意保険と燃費~大型バイクという「固定費」のリスク~
車検以外にも、排気量が上がれば上がるほど、消耗品(タイヤ、オイル、チェーンなど)の単価も上がり、燃費も悪化します。リッター35km走るバイクと、リッター20kmしか走らないバイクでは、長距離ツーリング時のガソリン代に倍近くの差が出ます。
また、任意保険についても考慮が必要です。年齢条件により保険料は安くなる傾向にありますが、車両保険をつけると大型バイクは跳ね上がります。
「憧れのハーレーやリッターバイクに乗りたい」という強い夢があるなら止めはしません。それは素晴らしい「投資」です。しかし、「なんとなく大きい方が偉い気がする」という理由だけで選ぶと、維持費が重荷になり、結果的に乗る回数が減ってしまいます。ガレージの肥やしにお金を払うほど、無駄なことはありません。
125cc(原付二種)という選択肢~セカンドバイクかメインか~
近年、大ブームとなっているのが125ccクラス(原付二種)です。高速道路には乗れませんが、維持費の安さは最強です。
- 税金が安い: 軽自動車税が年間2,400円程度。
- ファミリーバイク特約: 自動車保険(任意保険)の特約を使えるため、保険料が格安。
- 燃費が良い: リッター40km〜50km走る車種も珍しくない。
下道のトコトコ旅や、近場の散策、キャンプツーリングなら125ccでも十分に楽しめます。また、車体が軽いため取り回しの不安も皆無です。メインのバイクをこれにするのも手ですし、あるいは「稼ぐ」ためのブログ取材用や日常の足として1台保有するのも賢い戦略です。
「長く乗れる」相棒の条件~スペックよりもフィーリング~
コストと体力の現実を踏まえた上で、では具体的にどのようなバイクを選べば、長く愛用できるのでしょうか。カタログスペックの馬力や最高速を見るのではなく、「自分の感覚」を基準に選ぶことが大切です。
前傾姿勢は腰に来る!楽なライディングポジションの重要性
60代にお勧めしたいのは、背筋がスッと伸びる、あるいは少しだけ前傾する程度のライディングポジションです。具体的なカテゴリーで言えば、「アドベンチャー」「スクランブラー」「ネイキッド(バーハンドル)」などが該当します。
これらのバイクは視点が高く、遠くまで見通せるため、運転中の精神的な余裕が生まれます。また、腰や手首への負担が少ないため、長距離を走っても疲れにくいのが特徴です。「セパレートハンドル」と呼ばれるスポーツタイプのハンドルは、見た目はレーシーでかっこいいのですが、前傾姿勢がきつく、腹筋と背筋が衰えた体には拷問に近い苦痛を与えることがあります。試乗の際は、最低でも20分程度走ってみて、首や腰に違和感がないかを確認しましょう。
足つきの良さは「安心感」に直結する
先ほども触れましたが、「足つき」は死活問題です。信号待ちのたびに、つま先立ちでプルプルと震えながらバイクを支えるのは、精神衛生上よくありません。
両足の裏がべったりと地面につく、あるいは片足でも余裕を持って支えられる車高のバイクを選びましょう。最近のバイクはシート高が高いモデルも多いですが、メーカー純正のローダウンキットや、シートの加工(アンコ抜き)で改善できる場合もあります。デザインだけで決めるのではなく、「跨ってみて不安がないか」を最優先事項としてください。
最新の安全装備(ABS・トラコン)は保険と考える
古いバイク(旧車)には独特の味があり、人気があります。しかし、メカに詳しくない限り、60代からの相棒としてはリスクが高いかもしれません。故障のリスクに加え、安全装備がないからです。
現代のバイクには、急ブレーキ時のタイヤロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)や、滑りやすい路面での転倒を防ぐトラクションコントロールなどの電子制御が装備されています。反射神経が鈍ってくる私たちにとって、これらの装備は最後の砦となります。万が一の時に機械が助けてくれる安心感は、長く乗り続けるための大きな支えとなります。
公務員を辞めて選んだ「私のバイクライフ」実践編
ここで少し、私自身の話をさせてください。私も公務員時代は、「いつかは大型バイクで北海道を一周したい」という漠然とした夢を持っていました。しかし、実際に退職後に選んだのは、最終的に軽量な250ccのアドベンチャーバイクでした。
見栄を捨てて「ダウンサイジング」した結果
最初は大型免許を持っていたこともあり、ハーレーを購入しました。しかし実際に乗ってみると、燃費が悪くて、しかも重すぎて走れる場所が少ないのです。ハーレーは1年だけ乗りましたが、そこで思い切って排気量を下げ、車重が軽いモデルを選びました。
結果は大正解でした。狭い山道や未舗装の路地に入り込むことへの躊躇がなくなり、本当に自由な旅ができるようになったのです。「重いからあそこに行くのはやめよう」という心理的ブレーキがかからないことこそが、本当の意味での「機動力」だと実感しています。
浮いた維持費を「旅の宿代」と「装備」に回す楽しみ方
車検や高い消耗品代がかからない分、浮いたお金を「体験」に回しています。ビジネスホテルではなく、料理の美味しい温泉宿に泊まったり、ご当地の美味しい食材を食べたり。あるいは、GoProなどの撮影機材や、高機能なキャンプ道具にお金をかけることもできます。
「バイクそのもの」にお金をかけるのではなく、「バイクを使って得られる体験」にお金をかける。これが、当サイトが提唱する「稼いで遊ぶ:攻めのセカンドライフ」の真髄です。通帳の残高を気にしながら走るよりも、心に余裕を持って走る方が、何倍も景色が美しく見えます。
60代ライダーが揃えるべき「守り」の装備
最後に、バイク選びと同じくらい重要な「装備」についてお話しします。ここは節約してはいけないポイントです。私たちは組織という守ってくれる後ろ盾を失っています。体一つが資本の個人事業主や、自由な生活者にとって、怪我による入院は経済的にも精神的にも大打撃となります。
プロテクター入りウェアとエアバッグベストの必要性
普段着でバイクに乗るのは避けましょう。肘、肩、膝、そして胸部と脊椎にしっかりとしたプロテクターが入っているライディングウェアを着用してください。最近はデザイン性の高いカジュアルなものも増えています。
そして強く推奨したいのが「着用するエアバッグ」です。万が一バイクから放り出された際、瞬時に膨らんで首や胴体を守ってくれるベスト型の装備です。数万円の投資ですが、これで命や後遺症のリスクが減らせるなら安いものです。会計担当的に言えば、これは最強の「リスクヘッジ」であり、必須の経費です。
軽量ヘルメットで首と肩の負担を軽減する
ヘルメット選びも重要です。安全性はもちろんですが、60代には「軽さ」も重要なスペックです。重いヘルメットは、長時間かぶっていると首や肩に深刻な凝りを引き起こし、頭痛の原因にもなります。
カーボン素材などを使用した軽量モデルは高価ですが、快適性が全く違います。首への負担が減れば、視界確認もスムーズになり、結果として安全運転に繋がります。長く快適に走るための投資として、ヘルメットには予算を割くことをお勧めします。
まとめ
60代からのバイク選びは、単なる乗り物選びではなく、これからの生き方選びそのものです。
- 見栄を張らず、自分の体力に合ったサイズを選ぶ。
- 維持費を抑え、その分を「体験」や「安全」に投資する。
- 長く乗り続けるために、リスク管理を徹底する。
これが、元公務員流の「賢いバイクライフ」の始め方です。もし、まだ車種に迷っているなら、いきなり購入せずに「レンタルバイク」を利用するのも一つの手です。半日ほど乗ってみれば、そのバイクが自分の体に合っているか、維持できそうかが体感として分かります。
風を切って走る喜びは、何歳になっても色褪せません。むしろ、人生の酸いも甘いも噛み分けた今だからこそ、味わえる深みがあります。さあ、あなたも自分にぴったりの相棒を見つけて、新しい自由の扉を開けてみませんか?その先には、組織の中では決して見ることのできなかった、鮮やかな景色が広がっているはずです。


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