「定年したら、妻とゆっくり温泉でも行きたいな」
現役時代、残業続きのデスクでそう呟いていた自分がいませんか?しかし、残念なお知らせがあります。定年後に「再雇用」を選んでしまった瞬間、その夢は色あせたものになります。
なぜなら、給料は半減しているのに、旅行に行けるのは現役時代と同じ「混雑して料金が高い週末」だけだからです。
私は58歳で再雇用を選ばない決断をし、現在は自分のスキルでお金を稼ぎながら、平日のガラ空きの温泉地をツーリングで巡っています。火曜日の午前11時、貸切状態の露天風呂から見る景色は、まさに「勝者」の眺めです。
この記事では、元会計担当の視点から「再雇用を断って平日旅行を楽しむ経済的合理性」と、組織を離れた人間にしか味わえない「極上の温泉体験」について解説します。
再雇用という「足かせ」が温泉旅行を惨めにする理由
多くの公務員が「なんとなく」選んでしまう再雇用制度。しかし、旅行という観点から見ると、これほどコストパフォーマンスの悪い選択肢はありません。かつて会計実務を担当していた私の試算をもとに、その「数字の罠」を明かします。

「土曜料金」があなたの時給を食いつぶす
旅行業界には「休前日料金」という絶対的なルールがあります。人気の温泉旅館であれば、平日は1泊15,000円のプランが、土曜日は25,000円以上に跳ね上がることは珍しくありません。
夫婦2人で2万円の差額。これは、再雇用後の手取り時給(約1,200円〜1,500円程度)に換算すると、なんと「約15時間分の労働」がただの日程差額として消えていく計算になります。
「安い給料で働き、高い時期にしか旅行に行けない」。この構造的欠陥に気づかずに再雇用契約書にハンコを押してはいけません。
週末の混雑は「元部下」への遭遇リスクを高める
笑い話のようですが、切実な問題です。
公務員、特に地方公務員の場合、週末の近場の観光地や人気の温泉地は、現役職員の保養先としても人気があります。
せっかくのリフレッシュ休暇で、脱衣所でかつての部下(今の上司)と鉢合わせる気まずさ。再雇用で組織に残るということは、プライベートの領域まで「組織の人間関係」が侵食してくるリスクを負うことなのです。
平日旅行こそ「定年後の正解」。元公務員が享受する3つのメリット
私は現在、完全に組織を離れ、執筆業などで収入を得ながら生活しています。そんな私が実践している「平日旅行」には、単なる安さ以上の価値があります。
料金は半額、サービスは2倍
平日の温泉宿は、まさに別世界です。
私が以前宿泊した箱根の某高級旅館は、火曜日の宿泊客がわずか3組でした。通常ならビュッフェ形式の夕食が、その日は特別に個室での懐石料理にグレードアップ。仲居さんもつきっきりで対応してくれ、まさに「先生」と呼ばれていた頃のような丁寧な扱いを受けました。
コストを抑えながら、承認欲求も満たされる。これが平日旅行の醍醐味です。
「渋滞知らず」はツーリングの快楽を最大化する
バイク乗りにとって、渋滞は最大のストレスです。
現役時代、紅葉シーズンの日光いろは坂で、進まない車列の中でクラッチを握り続け、左手が痙攣した経験はありませんか?
平日の観光道路は驚くほど空いています。自分のペースでコーナーを抜け、対向車を気にせず絶景ポイントでバイクを停めて写真を撮る。
「みんなが働いている時間に、自分は遊んでいる」
この背徳感に近い優越感こそが、定年後のメンタルを若々しく保つ秘訣です。
「急な予約」が天気を味方につける
現役時代は、数ヶ月前から有給休暇を申請し、当日の天気が雨でも行かざるを得ませんでした。
しかし、毎日の出勤義務がない生活なら、「明日から3日間晴れだから、草津へ行こう」という決定が可能です。
常に最高のコンディションで絶景を楽しめる。これはお金では買えない贅沢です。
組織を離れた元公務員に捧ぐ、魂の温泉宿3選
再雇用のデスクにしがみつくのをやめ、自由を手に入れたあなたに行ってほしい、とっておきの温泉地を紹介します。これらは「平日に行くからこそ輝く」場所です。
熊本県・黒川温泉「入湯手形」で組織の鎧を脱ぐ
黒川温泉の魅力は、宿単体ではなく「街全体」がひとつの旅館のように機能している点です。
浴衣に着替え、入湯手形を首から下げて、石畳の坂道を歩く。そこには役職も、年金への不安も存在しません。
特に平日は、人気の露天風呂「仙人風呂」なども貸切状態で入れる時間帯があります。川のせせらぎを聞きながら、ぬるめの湯に浸かり、「もし再雇用を選んでいたら、今頃は書類の決裁印を確認していたな」と思い返す時間は、何ものにも代えがたいものです。
秋田県・乳頭温泉郷「鶴の湯」で電波を断つ
「連絡がつく」こと自体がストレスだった公務員時代。
乳頭温泉郷の象徴である「鶴の湯」は、茅葺き屋根の長屋が並び、タイムスリップしたような感覚に陥ります。
ここはあえて、携帯の電波が入りにくい環境を楽しむ場所です。白濁した湯に浸かり、誰からも連絡が来ない静寂を楽しむ。これこそ、定年まで国や地域のために走り続けたあなたへの、最高のご褒美ではないでしょうか。
群馬県・法師温泉「長寿館」で歴史と対峙する
明治の面影を色濃く残す、国登録有形文化財の宿です。
足元からぷくぷくとお湯が湧き出る「足元湧出温泉」は、生まれたてのお湯のパワーを感じられます。
混浴の大浴場(法師乃湯)は、週末は芋洗い状態で風情も何もありませんが、平日の午前中なら、高い天井に響く湯の音だけを聞きながら、鹿鳴館様式の建築美を独り占めできます。古い建物を維持し続ける宿の姿勢に、長いキャリアを全うした自分の人生を重ね合わせることができるでしょう。
旅行資金は「年金」ではなく「スキル」で稼ぐ
「そんな優雅な旅行、年金だけでは無理だ」
そう思われたかもしれません。おっしゃる通り、年金だけで頻繁に旅行に行けば、老後資金は枯渇します。だからといって、再雇用で時間を切り売りするのはナンセンスです。
公務員の「文書作成能力」は旅費に変わる
私が提案するのは、現役時代に培ったスキルをお金に変えることです。
具体的には、私のようにKindle出版やブログ記事の執筆を行うこと。公務員が当たり前にやっている「正確な情報を調べ、分かりやすく文章にまとめる」能力は、市場では高い価値があります。
例えば、今回の旅行で得た「平日旅行の安さと快適さ」を記事にしたり、撮影した写真をKindle写真集として出版したりすれば、旅行そのものが「取材」になり、経費として計上できる可能性も出てきます(※税務上の詳細は税理士にご確認ください)。
「消費」するだけの旅行から、「生産」につながる旅行へ。
このシフトチェンジこそが、年金に頼らず、死ぬまで温泉旅行を楽しみ続けるための唯一の解です。
定年後の人生は、再雇用の辞令交付を受け取るか、それを断って自由な荒野へ踏み出すかで180度変わります。
平日、誰もいない露天風呂で手足を伸ばした時、あなたは心の底から思うはずです。
「自分の人生を取り戻した」と。
まずは今度の有給休暇で、あえて平日に一人旅に出てみてください。そこで感じる解放感こそが、あなたの進むべき未来の答えになるはずです。


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