「公務員を辞めて、個人で稼いでいきたい」。
そう決意した時、あなたの前に立ちはだかる最大の壁は、上司でも世間体でもなく、実は「配偶者」かもしれません。長年、安定した生活を共にしてきたパートナーにとって、その言葉は青天の霹靂。猛反対されるのは目に見えています。
しかし、そこで諦めて、望まない再雇用の道を選べば、後悔するのはあなた自身です。
この記事では、元国家公務員であり、定年後の再雇用を断って独立した私が、妻を説得するために実践した「元公務員流プレゼン術」を公開します。感情論ではなく、具体的な数字とリスクヘッジに基づいたロジックで、パートナーの不安を「応援」に変える方法。夫婦で笑ってセカンドライフを迎えるための、必勝の説得マニュアルです。
「公務員を辞める」と言った瞬間、妻(夫)の顔から色が消えた
「定年後は再雇用を選ばずに、個人事業主としてやっていきたい」
夕食後の団らんの場が一変し、重苦しい沈黙が流れる。
妻(あるいは夫)の目には、驚き、不安、そして微かな怒りが混じっているのが分かります。
「何を言っているの?」
「退職金はどうするの?」
「年金だけで食べていけると思っているの?」
矢継ぎ早に飛んでくるであろう質問への恐怖で、胃が痛くなる思いをしたことはありませんか。

公務員という職業は、世間一般において「安定」の代名詞です。配偶者にとって、あなたがその身分を捨てることは、生活の基盤そのものが崩れ去るような恐怖に等しいのです。私自身、50代で組織を離れる決断をした時、妻を説得するのに最もエネルギーを使いました。
しかし、感情的に「俺の夢なんだ!」と訴えても、長年連れ添ったパートナーは納得しません。元公務員である私たちが使うべき武器は、情熱ではなく「根拠」と「数字」です。この記事では、私が実践した「妻(夫)を味方につけるための説得ロジック」と、独立後の生活を守るための具体的な準備についてお伝えします。
なぜパートナーは猛反対するのか?「安定」という名の呪縛を解く
まずは敵(と言っては失礼ですが)を知ることから始めましょう。配偶者が反対する理由は、決してあなたの挑戦を邪魔したいからではありません。家族を守ろうとする防衛本能によるものです。
「再雇用なら安泰」という神話への依存
多くの公務員の配偶者は、「定年後は再雇用制度を利用して、65歳まで働くのが当たり前」と考えています。給与が現役時代の半分以下になろうとも、毎月決まった日に給料が振り込まれ、社会保険も継続される。この「変わらない日常」が続くことへの安心感は絶大です。
そこに「個人事業主」という、収入が保証されない不安定なカードが提示されれば、拒絶反応を示すのは当然です。「なぜわざわざ苦労する道を選ぶのか」という問いに対し、明確なメリットを提示できなければ、説得は不可能です。
社会的信用を失うことへの世間体と不安
意外と根深いのが「世間体」の問題です。「ご主人は公務員で立派ですね」と言われ続けてきた妻にとって、夫が「無職(に見える自営業)」になることは、ご近所や親戚への説明に困る事態でもあります。
「〇〇さんの旦那さん、公務員を辞めて何をしているのかしら」と噂されるのではないか。そんな漠然とした不安が、反対の根底にあることを理解してあげる必要があります。
説得のカギは「公務員流」の資料作成能力にあり
感情論での説得は、火に油を注ぐだけです。私たちが現役時代、上司や議会を説得するために何をしてきたかを思い出してください。そう、徹底的な「資料作成」と「数字による裏付け」です。家庭内プレゼンにおいても、このスキルが最大の武器になります。
家計のキャッシュフロー表を作成し「見えない恐怖」を消す
配偶者の最大の恐怖は「老後資金が底をつくこと」です。これを払拭するために、エクセルで向こう20年分(80歳くらいまで)のキャッシュフロー表を作成しましょう。
- 退職金の受取額(手取り)
- 再雇用を選んだ場合の給与総額(5年間)
- 個人事業主として目指す現実的な売上目標
- 年金受給開始後の収支
ここで重要なのは、個人事業主としての売上を「希望的観測」で書かないことです。「Kindle出版とブログで月5万円」といった、堅実かつ実現可能な数字を入れます。そして、「たとえ事業が失敗しても、退職金と年金で最低限の生活は維持できる」という最悪のケース(ワーストシナリオ)も併せて提示します。
「リスクはあるが、破綻はしない」ことを数字で証明できれば、相手の態度は軟化します。
「自分年金」というパワーワードを使う
私が妻を説得した際、効果的だったのが「自分年金」という言葉です。
「再雇用で働けば、65歳で契約が終わる。その先は年金だけだ。でも、今から個人で稼ぐ力をつければ、70歳でも80歳でも稼ぎ続けられる。これは俺たちが豊かに暮らすための『自分年金』を作るプロジェクトなんだ」
単なる「起業」ではなく、老後の安全網を強化するための「投資」であると位置づけることで、配偶者の認識を「リスク」から「将来への備え」に変えることができます。
絶対に言ってはいけないNGワードと、伝えるべき「痛み」
説得の際、口が裂けても言ってはいけない言葉があります。それは「自由になりたい」「楽をしたい」という言葉です。
「俺の好きにさせてくれ」は禁句
これを言った瞬間、配偶者は「家族を犠牲にして自分だけ遊ぶつもりか」と心を閉ざします。あくまで「夫婦二人のこれからの人生を豊かにするため」という視点を忘れてはいけません。
また、「再雇用なんてプライドが許さない」という言い方も、単なるわがままに聞こえがちです。しかし、ここの伝え方は工夫が必要です。
再雇用の「精神的コスト」を正直に吐露する
私は妻に、正直な気持ちを話しました。
「かつての部下が上司になり、その指示に従ってコピー取りや雑用をする。給料は半分以下。そんな環境で毎日ストレスを抱えて帰宅する俺と、収入は不安定でも、毎日生き生きと自分のビジネスに挑戦している俺。どっちと一緒に老後を過ごしたい?」
組織に残ることの「精神的な痛み」と、それが家庭の空気に与える悪影響を想像させるのです。妻も、夫が毎日暗い顔をして愚痴をこぼす生活は望んでいません。「あなたがそこまで思い詰めているなら…」と思わせることが、突破口になります。
具体的勝算の提示:Kindle出版とブログという「ローリスク」な選択
精神論で納得させた後は、具体的なビジネスモデルの提示です。ここで「退職金で飲食店をやる」「株で稼ぐ」などと言えば、即座に離婚届を突きつけられるでしょう。
元手ゼロ・在庫ゼロのビジネスモデルを説明する
私が選んだのは、Kindle電子出版とブログ運営です。これらは、パソコン1台あれば始められ、初期投資も在庫リスクもほぼゼロです。失敗しても失うのは「時間」だけ。
「公務員時代に培った文書作成スキルを活かして本を書く。元手はかからない。売れれば印税が入る。リスクはない」
この「堅実さ」こそが、公務員の妻を安心させる最大の材料です。実際に私が退職後5年間で、電子書籍の印税だけで540万円以上を稼ぎ出した実績(※当サイトの別記事で公開中)など、具体的な事例を見せるのも効果的です。
「お試し期間」を提案する妥協案
それでも不安がる場合は、「1年限定」などの期限付きで挑戦させてほしいと提案するのも手です。「1年やってみて、月〇万円の利益が出せなければ、再就職先を探す」と約束するのです。
また、もし定年までまだ時間があるなら、在職中から準備(執筆活動やブログの構築など、副業規定に抵触しない範囲での準備)を始め、実績を作ってから説得するという「既成事実化」も有効です。
まとめ:説得とは、これからの人生を共に歩むための「再契約」
公務員を辞めて個人事業主になる。それは、単なる職業の変更ではなく、生き方の転換です。その転換に、一番身近なパートナーを巻き込まない手はありません。
反対されることを恐れず、資料を用意し、誠意を持って膝を突き合わせて話し合う。そのプロセス自体が、定年後の夫婦関係を再構築する大切な儀式になります。
私の妻も最初は猛反対でしたが、今では私の出版した本を一番に読み、「今月の印税はどう?」と楽しそうに聞いてきます。平日に二人で混雑のない観光地へ旅行に行けるのも、組織を離れたからこその特権です。
あなたの決断が、あなた自身だけでなく、家族にとっても「正解」だったと思える日が来るよう、まずはしっかりとした準備と対話から始めてみてください。


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