定年退職の日を迎え、長年背負ってきた組織の重圧から解放された翌朝。目覚まし時計をかけずに起きる清々しさの中で、ふと天井を見上げて「さて、今日から何をしようか」と考え込んでしまう。そんな経験はありませんか。
「悠々自適なセカンドライフ」という言葉は美しいですが、現実はそれほど甘くありません。たっぷりある時間は、使い道を間違えれば「退屈」という苦痛に変わり、現役時代に比べて減ってしまった収入は「将来への不安」として重くのしかかります。ゴルフや旅行三昧はお金が続かないし、毎日テレビを見て過ごすには人生は長すぎます。
私は元国家公務員として定年まで勤め上げ、現在は再雇用を選ばずに「稼いで遊ぶ」生活を送っています。組織を離れて気づいたのは、定年後の趣味には「消費型」と「生産型」の2種類があるということです。
この記事では、世間で人気の趣味ランキングをご紹介しつつ、私が実践している「趣味を実益に変える(お金を生み出す)」という、少し攻めた定年後の過ごし方をご提案します。ただ時間を潰すのではなく、人生の密度を濃くする新しい趣味のあり方を、一緒に見つけていきましょう。
定年後の「黄金時間」をどう使う?趣味がもたらす3つのメリット
定年後の時間は、現役時代の「余暇」とは全く意味合いが異なります。会社員生活を40年近く続けてきた私たちにとって、仕事は単なる収入源ではなく、社会との接点であり、自己証明の場でもありました。それがなくなった今、趣味を持つことは、単なる暇つぶし以上の重要な意味を持ちます。
健康寿命の延伸と脳の活性化
「きょういく(今日行くところがある)」と「きょうよう(今日用事がある)」が老化防止の秘訣だと言われます。趣味を持つことで、家から一歩外へ出る理由が生まれます。
身体を動かす趣味は筋力の低下を防ぎ、指先や頭を使う趣味(楽器や執筆など)は認知機能の維持に役立ちます。特に、新しいことを学ぶプロセスは脳への最高の刺激となります。
社会的孤立の防止
組織を離れると、驚くほど人との会話が減ります。趣味のサークルや教室、あるいはSNSを通じた趣味仲間との交流は、会社という枠組みを超えた新しい人間関係をもたらしてくれます。利害関係のないフラットな人間関係は、精神的な安定剤となります。
「生産性」による自己肯定感の維持
これが最も重要です。現役時代、「誰かの役に立っている」「組織に貢献している」という感覚が私たちのプライドを支えていました。定年後、誰からも必要とされない感覚に陥るのを防ぐには、何らかの形で「生産」に関わる趣味を持つことが特効薬です。
それは野菜を作ることかもしれませんし、作品を作ることかもしれません。そして後述するように、自分の経験を発信して収益を得ることも、立派な生産活動です。
【2026年最新版】定年後に人気の趣味ランキングTOP10
まずは、一般的にシニア世代がどのような趣味を楽しんでいるのか、最新の傾向を見てみましょう。多くの調査で上位にランクインするのは、手軽に始められ、健康や教養に繋がるものです。
- 旅行(国内・海外)
まとまった時間が取れる定年後の王道です。現役時代には行けなかった場所へ、平日の安い時期に行けるのが最大の魅力です。 - 散歩・ウォーキング
お金をかけずに健康維持ができるため、圧倒的な支持を得ています。近所の再発見にも繋がります。 - 読書
図書館を利用すれば無料です。知的好奇心を満たし、静かな時間を楽しむことができます。 - 映画・ドラマ鑑賞
動画配信サービスの普及により、自宅で世界中の作品を楽しめるようになりました。 - 家庭菜園・ガーデニング
土に触れ、植物の成長を見守る喜びがあります。収穫した野菜を食べる実益も兼ねています。 - 料理
特に男性の参入が増えています。凝った料理や蕎麦打ちなど、職人気質を発揮できる分野です。 - パソコン・インターネット
SNSでの発信や、動画編集、プログラミング学習など、実用的なスキルとして人気です。 - 写真(カメラ)
散歩や旅行と相性が良く、感性を磨くことができます。 - 登山・ハイキング
自然の中で身体を動かす爽快感と、登頂の達成感が味わえます。 - 楽器演奏
昔やっていた楽器を再開したり、ピアノやウクレレに初挑戦したりする人が増えています。
これらの趣味はどれも素晴らしいものですが、多くは「お金と時間を使って楽しむ(消費する)」ものです。年金生活において、資金面での不安を感じながらでは、心から楽しめない瞬間が来るかもしれません。
そこで私が提案したいのが、次の章で紹介する「実益を兼ねた趣味」です。
元公務員が提案する「実益を兼ねた趣味」の選び方
「趣味で稼ぐなんて、特別な才能がある人だけだろう」と思われるかもしれません。しかし、インターネットが普及した現代において、個人の小さな経験や知識は、誰かにとっての価値ある情報になります。
特に、私たちのような元公務員や元会社員には、長年培った「事務処理能力」や「文章作成能力」という武器があります。これを活かさない手はありません。
書くことが資産になる「Kindle出版」
私が最もおすすめする趣味の一つが、AmazonのKindleストアで電子書籍を出版することです。「本を書く」というとハードルが高く聞こえますが、小説家のような文才は必要ありません。求められているのは、読者の悩みを解決する実用的な情報や、あなた自身のリアルな体験談です。
元公務員としての私の経験から言えば、Kindle出版はリスク回避を好む私たちの気質に非常に合っています。
- 在庫リスクゼロ、初期投資ゼロ
自費出版のように数百万円をかける必要はありません。Wordなどで原稿を書き、表紙を作れば、無料で出版できます。売れなくても赤字になることは構造上あり得ません。 - ストック型の資産になる
一度出版すれば、24時間365日、Amazonがあなたの代わりに販売してくれます。私が退職直後に書いた本は、5年経った今でも毎月収益を生み出し続けています。
「退職してからの手続き」や「現役時代の業務知識」、「趣味のこだわり」など、あなたの頭の中にある知識を棚卸ししてみてください。それが「印税」という形の年金になります。
好きなことを発信する「特化型ブログ運営」
もう一つの「稼げる趣味」がブログです。ただし、今日食べたランチの写真をアップするだけの日記ブログでは稼げません。特定のテーマに絞った「特化型ブログ」を運営するのです。
例えば、あなたが車やバイクが好きなら、愛車のメンテナンス記録や、ツーリングルートの紹介、使用しているガジェットのレビューなどを記事にします。
読者は「その部品の使い勝手はどうなのか」「そのルートの路面状況はどうか」といった具体的な情報を求めて検索してきます。その疑問に答える記事を書くことで、感謝され、結果として広告収入が得られるのです。
ブログ運営は、WordPress(ワードプレス)というシステムを使えば、月額1,000円程度のサーバー代で始められます。自分の城(メディア)を持ち、育てていく過程は、箱庭作りのような楽しさがあります。
お金をかけずに楽しめる「最高のひとり時間」
「稼ぐ」だけでなく、純粋に「遊ぶ」時間も大切です。しかし、ここでも「お金をかけずに質を高く」が私の流儀です。
平日ツーリングの優越感
もしあなたがバイクや車の運転が好きなら、定年後は最高の環境が待っています。それは「平日」が使えるということです。
現役時代、渋滞に巻き込まれながら走ったあの観光地も、平日の午前中ならガラガラです。自分のペースで走り、絶景を独り占めする。これは退職者に許された特権です。
例えば、関東近郊であれば「道志みち(国道413号)」や「宮ヶ瀬湖」、「奥多摩周遊道路」などは、平日であれば信号も少なく、快適なクルージングが楽しめます。
道の駅での食事も、行列に並ぶことなく楽しめます。高価な旅館に泊まらなくても、日帰りでコーヒーを沸かして飲むだけで、最高の贅沢時間が味わえます。
散歩・ウォーキング
基本中の基本ですが、散歩は最強の趣味です。特別な道具もいらず、思い立った時にすぐ始められます。
私はブログやKindleの執筆に行き詰まると、近所を歩くようにしています。足を動かして血流が良くなると、不思議と新しいアイデアが浮かんでくるものです。
健康維持(医療費の削減)と、クリエイティブな発想(収益の種)の一石二鳥の効果があります。
趣味が続かない人へ!自分に合うものを見つけるコツ
「そもそも、やりたいことが見つからない」「始めてもすぐに飽きてしまう」という方も多いでしょう。そんな時は、以下の2点を意識してみてください。
「昔好きだったこと」を思い出す
子供の頃、時間を忘れて熱中していたことは何ですか?プラモデル作り、絵を描くこと、昆虫採集。大人の事情で封印していたその情熱の中に、ヒントがあります。私はそれがバイクでした。50代でリターンライダーとして復帰した時の「風を切る感覚」は、忘れていた野生を呼び覚ましてくれました。
「小さく始める」ことの重要性
最初から高い道具を揃えたり、高額な教室に通ったりする必要はありません。まずはYouTubeで動画を見たり、図書館で関連本を借りたりすることから始めましょう。
ブログなら無料ブログからではなく、少額でもサーバーを借りてWordPressで始めるのがおすすめですが、それでも月1,000円程度のリスクです。「違ったら辞めればいい」くらいの軽い気持ちで、手当たり次第に試してみるのが、定年後の特権です。
定年後の生活リズムと趣味のバランス
趣味に没頭するのは良いことですが、生活リズムが乱れては本末転倒です。
現役時代は会社が時間を管理してくれましたが、これからは自分で自分を律する必要があります。
おすすめは、現役時代と同じ時間に起き、午前中は「生産的な活動(Kindle執筆やブログ、家事)」に充て、午後は「消費的な趣味(読書、映画、散歩)」に充てるというように、時間を区切ることです。
「やるべきこと(生産)」と「やりたいこと(消費)」のバランスが取れていると、精神衛生上も非常に良く、毎日充実感を持って眠りにつくことができます。
まとめ:エンジンのキーを回すのは自分自身
定年後の生活は、誰からも指示されない自由な世界です。それは時に不安でもありますが、自分の舵取り次第で、現役時代以上にエキサイティングなものになります。
ただ消費して終わるだけの趣味ではなく、経験を資産に変える「Kindle出版」や「ブログ」。
そして、平日の特権をフル活用した「大人の遊び」。
これらを組み合わせることで、年金だけに頼らない経済的な自立と、精神的な豊かさの両方を手に入れることができます。
「もう歳だから」とブレーキをかける必要はありません。人生の第2章、エンジンのキーを回して、新しい景色を見に行きましょう。


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