「定年まであと2年。再雇用で年収が半分以下になる現実に甘んじていいのか?」
そんな焦りを感じながらも、公務員として長年培った事務能力以外にこれといった特技がない。そう嘆いていた私が、58歳でたどり着いたのが「Kindle出版」と「ブログ執筆」という道でした。
退職後の働き方を模索する中で、最初に直面したのが「パソコン選び」の壁です。役所で30年以上使い続けたWindowsか、憧れのMacか。これは単なる道具の話ではなく、組織を離れて生きていくための「相棒選び」の話です。
本記事では、元会計実務担当の視点から、無駄な出費を抑えつつ、執筆効率を最大化するためのPC環境について解説します。若者のようなハイスペックは不要です。しかし、老眼や肩こりに悩む私たち世代だからこそ、絶対に妥協してはいけないポイントがあります。
あなたが自信を持って「再雇用拒否」を選択し、パソコン一台で自由な時間を手に入れるための、最初の環境構築ガイドとしてお役立てください。
「公務員脳」が選ぶべきはMacかWindowsか
私たちが長年親しんできたのは、無骨な黒い筐体のノートパソコンや、デスクトップ型のWindows機でした。一太郎やExcelを駆使するには最適でしたが、個人のクリエイティブな作業にはどうなのでしょうか。結論から申し上げますと、ブログ執筆とKindle出版において、「絶対にこちらでなければならない」という正解はありません。しかし、「適性」は確実に存在します。

Windowsを選ぶメリット:圧倒的な「慣れ」と「互換性」
公務員生活で培ったOfficeソフトのスキルは、私たちの最大の武器です。Kindle出版の原稿作成において、最も標準的でトラブルが少ないのは「Microsoft Word」です。
Kindleの電子書籍データ(KPFファイルやEPUBファイル)を作成する際、Wordの「見出し機能」や「目次作成機能」を駆使します。この操作感において、Windows版のWordはやはり安定しています。ショートカットキーが指に染み付いているため、思考を止めることなく文章を打ち込める点は、大きなアドバンテージです。
また、確定申告(e-Tax)や会計ソフトの利用においても、Windowsの方がマイナンバーカードリーダーなどの周辺機器との相性トラブルが少ない傾向にあります。定年後に個人事業主として開業届を出し、自分で経理を行う際、「役所の手続き関係」はWindows基準で作られていることが多いという現実は無視できません。
Macを選ぶメリット:執筆への「没入感」と「所有欲」
一方で、私が退職後の相棒としてMacを選んだ(そしてWindowsと併用している)理由には、機能以上の意味があります。それは「気持ちの切り替え」です。
MacBook Airの薄いボディを開き、美しいRetinaディスプレイに向かうとき、私は「組織の人間」から「個人のクリエイター」へとスイッチが切り替わります。特にフォントの美しさは特筆すべき点です。Windowsの標準フォントに比べ、Macのヒラギノフォントなどは文字の輪郭が滑らかで、長時間文字を見続けても目が疲れにくいと感じます。50代後半になり、老眼が進んできた私にとって、この「文字の読みやすさ」は作業効率に直結します。
また、Macはトラックパッドの操作性が極めて高く、マウスを持ち歩かなくても快適に作業ができます。これは、お気に入りのカフェや図書館、あるいはツーリング先の宿で執筆する際に、荷物を減らせるという大きなメリットになります。
Kindle出版・ブログ執筆に必要なスペックの正解
パソコンショップに行くと、動画編集やゲーミング用のハイスペックマシンを勧められることがありますが、私たち「物書き」にはそこまでの性能は不要です。しかし、ケチりすぎて動作が重くなることだけは避けなければなりません。ストレスなく執筆に集中できる、必要十分なスペックを定義します。
CPUとメモリ:投資すべきはここ
文章を書くだけなら、最新の最高級CPUは不要です。しかし、ブラウザで調べ物をしながら、Wordで原稿を書き、同時に画像編集ソフトを開いて表紙を作る、といった「ながら作業」は頻繁に行います。
Windowsであれば、Core i5またはRyzen 5以上のCPU。Macであれば、M2またはM3チップを搭載したMacBook Airで十分です。Proシリーズは、動画編集をしない限りオーバースペックと言えるでしょう。
重要なのはメモリです。最低でも16GBを推奨します。8GBでも動作はしますが、将来的にOSのアップデートやソフトの高機能化に対応することを考えると、16GB積んでおけば今後5年は安心して使えます。「退職金を守る」という観点からも、安物買いの銭失いにならないよう、ここには投資すべきです。
ストレージ:クラウド活用を前提に
保存容量(SSD)については、256GBまたは512GBあれば十分です。なぜなら、執筆データは万が一のPC故障に備えて、必ずクラウドストレージ(OneDrive、Google Drive、iCloudなど)に保存すべきだからです。
大量の写真や動画を保存しない限り、テキストデータ自体は非常に軽量です。パソコン本体の容量にお金をかけるよりも、信頼できるクラウドサービスへの課金や、外付けのバックアップ用HDDにお金を使う方が、リスク管理として賢明です。
執筆効率を劇的に変える周辺機器への投資
パソコン本体以上にこだわりたいのが、直接体に触れるインターフェース部分です。現役時代、長時間座りっぱなしの業務で腰痛や肩こりに悩まされた経験がある方も多いでしょう。定年後の作業は、自分の健康を守りながら長く続けることが重要です。
キーボード:打鍵感は執筆の生命線
ノートパソコンのキーボードも悪くはありませんが、自宅で腰を据えて数千文字、数万文字を書くなら、外付けのキーボード導入を強くお勧めします。
私が愛用しているのは、静電容量無接点方式と呼ばれる高級キーボードです。一般的なキーボードと違い、底打ちしなくても入力が反応するため、指への負担が極めて少ないのが特徴です。価格は3万円台と高価ですが、腱鞘炎の予防や、心地よい打鍵音によるリズム感の向上は、価格以上の価値があります。公務員時代に使っていたメンブレン式の安価なキーボードとは、全く別次元の体験です。
ディスプレイ:老眼対策としての4Kモニター
ノートパソコンの小さな画面だけで作業を続けると、どうしても姿勢が悪くなり、首や肩への負担が増大します。また、細かい文字を見るために目を細めることは、眼精疲労の主因となります。
そこで導入したいのが、27インチ程度の4K外部モニターです。画面が広くなれば、左側に参考資料のWebサイトを表示し、右側で原稿を書くといった作業がスムーズに行えます。画面の切り替え(Alt + Tab)の回数が減るだけで、執筆の集中力は驚くほど持続します。文字サイズを大きく表示しても情報量が減らない点は、シニア世代の執筆環境として最強の武器になります。
電子書籍出版に必須のソフトウェア環境
ハードウェアが整ったら、次は中身です。Kindle出版を行う上で避けては通れないソフトウェアについて解説します。
Microsoft Word:やはり王道は外せない
Macを使う場合でも、Windowsを使う場合でも、Microsoft Wordは導入しておきましょう。無料のGoogleドキュメントやMac純正のPagesでも文章は書けますが、Kindle出版の最終工程である「入稿データの作成」において、Word形式(.docx)が最も汎用性が高く、解説情報も豊富だからです。
特に、目次の自動生成機能や、改ページの設定、段落スタイルの管理などは、Wordが業界標準です。公務員時代に培った文書作成スキルをそのまま活かせる場所でもあります。「形式」に厳しい公務員の習性は、実はKindle出版における「レイアウト崩れの防止」において非常に役に立ちます。
エディタソフトの活用:Scrivenerという選択肢
長編のビジネス書や小説を書く場合、Wordだけで構成を練るのは骨が折れます。そこで多くの作家が使っているのが「Scrivener(スクリブナー)」などの執筆支援ソフトです。
章ごとにファイルを分割して管理でき、構成の入れ替えもドラッグ&ドロップで簡単に行えます。いきなりWordで書き始めるのではなく、エディタソフトで構成を練り上げ、書き上がった文章をWordに書き出して体裁を整える。この「執筆」と「編集」の工程を分けることが、プロのような質の高い本を作るコツです。
元公務員の私が構築した「再雇用に頼らない」PC環境
最後に、現在私が実際に使用している環境をご紹介します。私は「自宅での集中作業」と「外出先での気晴らし作業」を明確に分けています。
メインマシン:13インチ MacBook Air(M2チップ)
結局のところ、私はMacを選びました。理由は「モチベーション」と「リセールバリュー」です。
退職後の新しい自分を演出するアイテムとして、Macのデザインは私の心を高揚させてくれます。また、Macは数年使っても中古市場での買取価格が高く、資産価値が落ちにくい点も、元会計担当としては見逃せないポイントでした。
メモリは16GB、ストレージは512GBにカスタマイズしています。このスペックなら、執筆作業で動作が重くなることは皆無です。
サブ環境としてのWindows仮想化
しかし、完全にWindowsを捨てたわけではありません。Macの中でWindowsを動かすソフトを使用し、どうしてもWindowsでしか動かない会計ソフトや、官公庁系の申請システムを利用する際に対応できるようにしています。
「MacかWindowsか」という二項対立ではなく、「Macをベースにしつつ、必要な時だけWindowsの機能を使う」というハイブリッドな運用が、私にとっての最適解でした。
定年後の「書斎」は自分で作る
公務員時代、私たちのデスクやパソコンは「与えられるもの」でした。スペックに不満があっても、交換を要求することは難しかったはずです。
しかし、これからは違います。
あなたが使う道具は、あなた自身が選び、投資するものです。パソコン一台で、これまでの経験を資産に変え、誰かの役に立つ本を出し、収益を得る。そんな新しい働き方を支えるパートナー選びには、どうか妥協しないでください。
もし、あなたが今、「再雇用で今の職場に残るか」「新しい道へ進むか」で迷っているなら、まずは休日に家電量販店へ足を運び、最新のパソコンに触れてみてください。その薄さと軽さ、画面の美しさに触れたとき、あなたの心はきっと「挑戦」の方へ傾くはずです。
退職金という守りの資産も大切ですが、それを生み出す「稼ぐ力」を支える環境への投資は、決して無駄にはなりません。最高の執筆環境を整え、私たちと一緒に「書くこと」で自由を手に入れましょう。


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