「定年後も今の会社に残りますか?それとも……」
58歳、役職定年を迎え、目の前に突きつけられた再雇用の契約書。そこに記された年収は、現役時代の半分以下。「これまでの貢献は何だったのか」という虚しさと、「辞めたら生活していけるのか」という強烈な不安。あなたも今、この板挟みの中で眠れない夜を過ごしていませんか?
私も5年前、同じ場所に立っていました。公務員という安定したレールから降りることの恐怖は、言葉では言い表せません。しかし、私は再雇用を断りました。そして今、心の底から言えます。「あの時の決断は正しかった」と。
この記事では、再雇用を拒否して5年が経った元公務員の私が、綺麗事一切なしの「リアル」をお伝えします。激減した年収の実際、魔の住民税との戦い、そして手に入れた「平日ツーリング」という圧倒的な幸福感。組織に頼らず生きる覚悟を決めた男の、嘘偽りのない全記録です。
再雇用を断って5年、後悔は「ゼロ」と言い切れる理由
「定年後の再雇用を断ったら、生活が破綻するのではないか」「社会とのつながりがなくなってボケるのではないか」。5年前、私も皆さんと同じように、見えない恐怖と戦っていました。
結論から申し上げます。再雇用を選ばなかったことへの後悔は、これっぽっちもありません。むしろ、あの時、周囲の「とりあえず残っておけ」という同調圧力に屈せず、自分の人生を取り戻す決断をした自分を褒めてやりたいと思っています。
もちろん、最初から順風満帆だったわけではありません。公務員という守られた立場から荒野に放り出されたような心細さを感じた瞬間もありました。しかし、5年が経過した今、私の手元にあるのは、現役時代には絶対に味わえなかった「圧倒的な時間の自由」と、組織に依存せずに自分の力で得た「ささやかながらも誇らしい収入」です。
なぜ私がここまで断言できるのか。それは、再雇用という制度が抱える構造的なストレスから完全に解放されたからです。給料が現役時代の半分以下になるのに、フルタイムに近い拘束を受け、かつて部下だった人間に頭を下げる。この「自尊心の摩耗」がない生活は、何ものにも代えがたい精神的な安定をもたらしてくれました。
【年収の変化】現役時代の半分以下でも「豊か」な財布の事情
最も気になるであろう「お金」の話を正直にお話しします。定年退職直後の年収と、5年経った現在の年収の推移、そして生活実感のギャップについてです。
退職1年目の衝撃と「魔の住民税」
退職して最初の1年は、正直に言って恐怖との戦いでした。収入はゼロ(失業手当の受給期間を除く)なのに、出ていくお金は現役時代並み、いえ、それ以上だったからです。
特に堪えたのが「住民税」と「国民健康保険料」です。ご存じの通り、住民税は前年の所得に対して課税されます。つまり、定年退職した翌年は、現役時代の高い給与水準に基づいた税金が請求されるのです。私の場合、数百万円単位の貯蓄が、息をするように消えていきました。「このまま貯金が底をつくのではないか」という焦燥感で、夜中に目が覚めることもありました。
この時期に再雇用を選んでいれば、手取りは減っても毎月のキャッシュフローは安定していたでしょう。しかし、私はここで「働く」のではなく「守る」ことに徹しました。現役時代に見直せていなかった固定費を徹底的に削減し、ダウンサイジングした生活基盤を整える期間と割り切ったのです。
5年後の現在、年収は300万円でも貯蓄は増えている
5年経った現在、私の年収は現役時代のピーク時の3分の1程度、約300万円ほどです。数字だけ見れば「転落」と思われるかもしれません。しかし、不思議なことに、生活の満足度は上がり、貯蓄は微増しています。
理由は明確です。まず、現役時代のような「ストレス発散のための浪費」が完全に消滅しました。高いスーツも、付き合いの飲み代も、見栄のための車検代も不要です。
そして収入の中身が変わりました。現在は、企業年金の一部に加え、自分の経験を綴った電子書籍(Kindle)の印税、ブログ運営による広告収入、そして時々受けるスポットのコンサルティング業務で構成されています。これらはすべて、誰かに命令されて得た給与ではなく、自分のスキルと工夫で生み出したお金です。
再雇用で嫌々働いて得る300万円と、自分の好きなこと、得意なことで稼ぐ300万円。金額は同じでも、その価値と幸福度は天と地ほどの差があります。
「自分年金」という考え方の確立
私が提唱したいのは、公的年金だけに頼らない「自分年金」の構築です。これは金融商品への投資だけを指すのではありません。
現役時代に培った「文書作成能力」や「事務処理能力」は、組織の外に出れば立派な商品になります。私は公務員時代に当たり前だと思っていたスキルを、クラウドソーシングや電子出版という形で市場に出しました。最初は数百円の利益でしたが、5年積み重ねることで、生活費の基礎部分を賄えるフロー所得に育っています。これが、将来への経済的な不安を払拭する最大の武器となりました。
【幸福度の変化】平日ツーリングの優越感と人間関係の断捨離
退職後の幸福度を決定づけるのは、お金以上に「時間の使い方」と「人間関係」です。この2点において、再雇用を辞めた選択は正解でした。
混雑知らずの観光地で感じる「勝者の気分」
私は趣味でバイクに乗りますが、現役時代は土日の渋滞に巻き込まれ、疲れるために出かけているようなものでした。しかし今は違います。
天気の良い平日の朝、「今日は宮ヶ瀬湖まで走ろうか」と思い立って出発する。道路はガラガラ、人気の蕎麦屋も並ばずに入れます。道志みちを独り占めして走る時の爽快感は、何物にも代えがたい「勝者の気分」を味わわせてくれます。
再雇用を選んだ同僚たちが、満員電車に揺られて職場に向かっている時間に、私は大自然の中でコーヒーを飲んでいる。性格が悪いと言われるかもしれませんが、この強烈な優越感こそが、退職後の自己肯定感を支える大きな要素になっています。「自分の時間はすべて自分のもの」という感覚は、一度味わうと手放せません。
組織の論理から解放されたストレスフリーな日々
再雇用を選ばなかった最大のメリットは、人間関係のストレスからの解放です。特に公務員や大企業の組織文化では、一度退職して再雇用されると、かつての部下が上司になり、敬語を使わなければならない場面も出てきます。
「鈴木さん(仮名)、この書類、書き直してください」
かつて自分が指導していた若手にこう言われ、唇を噛みしめる。そんな場面を想像するだけで、胃が痛くなりそうでした。
今は、付き合う人間を自分で選べます。嫌な人とは会わなくていい。利害関係のない趣味の仲間や、ブログを通じて知り合った前向きな人たちとの交流は、精神衛生上きわめて健全です。組織の看板が外れた「ただの鈴木誠(仮名)」として接してくれる人々との時間は、孤独を感じるどころか、現役時代よりも濃厚で温かいものです。
5年経っても「暇」にならない、私の生存戦略
「仕事辞めて何するの?」「毎日が日曜日だとボケるよ」と散々脅されましたが、5年経った今も、私は毎日忙しく過ごしています。ただし、それは「追われる忙しさ」ではなく「追いかける忙しさ」です。
公務員スキルを「換金」する楽しみ
現役時代、私たちは膨大な量の文書を作成し、根拠法令を調べ、ミスなく事務を遂行してきました。自分では「誰でもできること」と思っていましたが、世の中には文章を書くのが苦手な人や、役所の書類の意味が分からず困っている人が山ほどいます。
私はこのギャップにビジネスチャンスを見出しました。ブログで「難解な制度をわかりやすく解説する記事」を書いたり、Kindle出版で「会計手続きの解説書」をまとめたりしました。これが意外なほど感謝され、収益につながっています。
パソコンに向かってカタカタとキーボードを叩く時間は、現役時代と同じです。しかし、それが上司の決裁をもらうためではなく、読者の悩みを解決し、ダイレクトに自分の収入になる。このゲームのような感覚が、知的好奇心を刺激し続け、ボケる暇など与えてくれません。
健康こそが最大の資産運用
再雇用で通勤していたら、疲労とストレスで病院通いが増えていたかもしれません。私は浮いた時間を、意識的に健康投資に回しています。
スポーツジムに通い、妻と平日のランチを楽しみ、睡眠時間を7時間確保する。これにより、現役時代に悩まされていた高血圧の数値も改善しました。医療費がかからないことは、実質的な収入アップと同じです。心身ともに健康であることが、結果的に資産を守ることにつながっています。
これから決断するあなたへ:再雇用を断る勇気を持つために
もしあなたが今、再雇用のハンコを押すべきか迷っているなら、一つだけアドバイスがあります。それは「逃げの退職」ではなく「攻めの撤退」を準備することです。
「何もしない」は地獄への入り口
再雇用を断って後悔する唯一のパターンは、辞めた後に「やることがない」状態に陥ることです。会社に行くことが生きがいだった人が、いきなり自宅に籠もれば、半年で鬱々としてくるでしょう。
重要なのは、在職中に「次の居場所」の種を蒔いておくことです。それが趣味のサークルでもいい、副業の勉強でもいい、地域のボランティアでもいい。組織以外の名刺を持てる準備をしておけば、退職は「終わり」ではなく、新しいステージへの「移籍」になります。
プライドを守るための撤退戦
私たちは十分に働きました。組織のために滅私奉公し、家族を養い、税金を納めてきました。人生の残り時間、誰かに頭を下げてまで、わずかな賃金にしがみつく必要が本当にあるのでしょうか。
年収が下がることへの恐怖は幻想です。生活サイズを身の丈に合わせ、小さな稼ぎ口を自分で作れば、意外なほどなんとかなります。それよりも恐れるべきは、「あの時辞めておけば、もっと色々なことができたのに」と、動けなくなった体で後悔することです。
再雇用を断ることは、社会からの引退ではありません。組織という枠組みから卒業し、自立した個人として生き直すための、誇り高き宣言なのです。5年後の私が保証します。こちらの世界の景色は、あなたが想像しているよりも、ずっと明るく、自由ですよ。


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